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「なっ……にが、FBIおよびSWATで積んだ経験を元に超攻撃型のSPを組織します、だ! んなのSPじゃねえっつーの!」
ゴッ、と、テーブルに空になったコップを打ち付け、瑛司はアルコールでなめらかになった口で叫んだ。なんの変哲もないアイボリーの合板のテーブルは、昔、結婚と同時に買ったものだ。ひとりになってからも買い換えるのが面倒で、そのまま使っている。
「SPはなあ、要人の警護が仕事なんだよ、警護! 守るの! 守って、いかに速やかに危機から逃すかが求められる! の!」
「わかってるよ兄さん、それ何度も聞いたよ」
呆れつつ、白いシャツを肘まで腕まくりした元義弟、藍田麻琴が、テーブルの向こうから空のコップにビールを注いだ。
鯛のカルパッチョ、鶏の照り焼き、ひじきの煮物、きんぴら、おひたし、味噌汁とご飯。みんな麻琴の手料理だ。幼い頃から一回り年の違う看護師の姉の食事も作っていた麻琴の腕は、瑛司の元妻、瞳子の何倍も上だ。白い陶器の食器類は、これも結婚したときに買ったものだった。瑛司は料理をほとんどしないため、加賀谷家の食器はいつでも藍田姉弟のものだった。
「超攻撃型ってサッカーみたいだね」
麻琴は柔らかい髪が掛かる、ふわりとした眉の下のくりくりとよく動く瞳で、テーブルについた左肘がだんだんと滑ってほとんどつっぷしそうになっている瑛司を眺めた。
第五係は定時に解放となった。初日から溜め込んでしまった新係長への鬱憤を晴らすには飲みに行くしかなかったが、新課長直々に、負傷者は自宅で安静にしろと命令されてしまった。
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