464人が本棚に入れています
本棚に追加
瑛司はとりあえずごまかし、話題を変えようと、あえて亮一郎のことを持ち出した。
「そう、それで、その係長が悔しいけどすげえんだよ。ザイル一本で屋上から二十二階の広間に飛び込んできて、あっという間にテロリストを片付けてさ」
「え、何それ! すごい!」
麻琴は目を輝かせて食い付いてきた。
「そんなに若くて本庁の係長ってことはキャリア採用だよね。それが宙を飛びテロリストを制圧? SATでもないのにそんなことできるの?」
「それがやっちまうんだよな、あの野郎。えーっと、なんつってたかな。瀬名亮一郎警部、二十六歳、独身。東大法学部卒業後、キャリア入庁。その後すぐに、あっちの警備や要人警護を学ぶために渡米。シークレットサービスだけじゃなく、SWATにも参加して、徹底的に鍛えた……とかなんとか。アメリカ仕込みの戦闘術と、敵は排除するって考え方で人命を守ろうと思ってるわけだ。古きよき日本の伝統はぶち壊そうとしてるけどな」
ビールを飲み干し、瑛司はため息をついた。あぐらから左膝を立ててそこに顎を乗せる。
「昔はあんな、昼日中のホテルで銃撃戦なんて考えられなかっただろ。国際指名手配犯がサブマシンガン乱射して大臣を狙うなんて、映画の中の話だと思ってた」
麻琴もテーブルに頬杖を付き、うん、とうなずいた。
「そうだね。僕が入庁したときに比べても、銃がらみの犯罪はどんどん増えてる。今じゃ、一般市民だって簡単に銃を手に入れられるんだ。発砲事件も珍しくなくなってるし。そのうち、高校生が鞄に銃を隠して登校するようになるかもしれない、ドラッグみたいに」
最初のコメントを投稿しよう!