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ガガガガガガッ、と凶暴な破裂音が鳴り響いた。広がりつつある煙幕の中、いまや粉々に破壊されたテーブルや椅子の破片が舞い散る。裂けたテーブルクロスが抜け落ちた鳥の羽のようにひらひらと宙を踊った。
テロリストたちは咄嗟に跳び退き、自分たちが立っていた場所の絨毯と同じように破裂する運命を逃れた。と思うやスーツの男は振り子の勢いを利用して場内に踊り込み、煙幕の中に姿を隠した。
そのとき、銃声が途切れた。テロリストが一瞬見せた動揺だった。
瑛司はその空隙を逃さなかった。低い体勢のまま素早く広間を駆け抜け、テロリストが盾にしている長方形の大きなテーブルの向こうに躍り込む。襲撃者のひとりが気付く間もなく背後に近付き、居合いが目に見えぬ速さで木偶を両断するように、その後ろ首に銃のグリップの底を叩き付けた。男は声もなく昏倒する。しかしその体が床に倒れ伏せる前に、煙幕の向こうに影が動いた。と思うや、狂気の火花が散った。
「仲間まで殺す気かよ……!」
咄嗟に身をひるがえして床に転がり逃れた瑛司だったが、間近で乱射された銃弾をすべて避けきることはできなかった。左の上腕を刺すような灼熱が掠めた。一瞬遅れてびりりと痺れるような痛みが走る。
「クソ……!」
瑛司はリボルバーを構えた。そのときだ。
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