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床に倒れた三人の男たちは、メット、ゴーグルを始め、特殊部隊のような装備だ。背中に所属が書かれていてもおかしくない。
「おい! 救護班、こっちだ」
わらわらと人が増えてきた入口の方に向かって柿生は声を上げた。気付いた警官が救急隊員を呼びに走る。外務大臣は口も聞けない様子だったが、怪我はない。瑛司たち第五係は任務を全うしたのだ。
大臣に次いで、手錠を掛けられ搬送される襲撃者を見、瑛司は小さくこぼした。
「生きててよかった……」
「射殺したと思いましたか?」
思わずギクリとした。そう言った声は、あの知らぬ男のものだったからだ。
今の言葉は、窮地を救ってくれた男の神経を逆撫でしたりはしなかっただろうか。若干の気まずさを覚えながら振り返る。
そこにいた男に、瑛司は一瞬、虚を突かれた。
冷たそうな声の印象以上に若い青年だった。アサルトライフルを片手にしている。
三十八の瑛司よりもかなり若い。一回りは違うだろう。一七九センチの瑛司を越す長身と、細身の体。ジャケットのボタンを外したままの濃紺のスーツ、白いワイシャツ、地味な臙脂のネクタイ、黒い革靴と、その姿は毎日目にする警護課員そのものだった。しかしそんな格好でも、強く印象に残る。それはその顔貌によるところだった。
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