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瑛司と同僚たちはそれぞれに視線を交わした。誰もがこの突如現れた、しかも今日から同じ係となる驚異の戦闘能力を持つ青年に困惑を隠せなかった。
だが、驚くのはまだ早かったのだと、皆すぐに思い知らされた。
亮一郎は相変わらずの無表情で、柿生に告げた。
「辞令は帰庁してからとなりますが、報告するようにと警備部長より申しつかりました。柿生柿生警部は本日付けで警備課課長に昇任されます。おめでとうございます」
「え……はあ?」
長い警察暮らしで多少のことなら受け止めて流す術に長けた柿生だったが、それにはさすがに素っ頓狂な声を上げた。突然の昇進に驚き、まるで悪い知らせを聞いたかのように両手で白髪が混じり始めたオールバックの頭を抱える。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、何も聞いてないぞ」
「今朝決定されたばかりなので当然です」
ぴしりと言い返した亮一郎は、次いで瑛司たち係員に視線を向けた。
「柿生警部の昇任により、本日より第五係係長に任命されました。よろしくお願いします」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。瑛司は自分と同じように唖然としている綾と羽田、横越を見て、もう一度こわごわ亮一郎を振り返った。
「な……なんだって……?」
「ですから――」
若い警部は、同じことを二度言わされる苛立ちを目元に浮かべ、淡々と告げたのだった。
「警備課第五係係長は、僕です。皆さんには僕の方針に従ってもらいます。反論は許しません」
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