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翌朝、目覚めたら寝台の上で眠っていた。
月華ははっとなって身を起こす。
おそらく悠里が寝台まで運んでくれたのだろう。
「お目覚めになられましたか?」
窓辺にもたれるように背中をあずけて立ち、悠里がこちらを見下ろし微笑んでいる。
朝日を浴びる悠里の笑顔がことさら眩しくて、月華は目を細めた。
「ごめんなさい……私、いつの間にか眠ってしまって」
「いいえ、わたしの方こそ月華様の可愛い寝顔を盗み見してしまいました。どうかお許しください」
戸惑いを覚えて手元に視線を落とし、月華は頬を朱に染める。
可愛いと言われて、どういう反応をとればよいのかわからなかった。
おもむろに近寄ってきた悠里の右手が頬のあたりに伸び、月華はぴくりと肩を震わせた。
悠里の手が頬に触れる直前でとまる。
「すみません。おどろかせてしまいました」
両手でシーツを握りしめ、月華はいいえ、と消え入りそうな声を落とし頭を振る。
悠里はふわりと笑って窓の外を見やった。
「見事なお庭ですね。よろしければ、後で一緒に散歩をしませんか?」
思わぬ悠里の提案に、しかし、月華はでも……と言葉を濁す。
そこへ、次の間から食事の盆を手に現れた侍女に、悠里は傷薬を頼みさらに、月華を庭の散策に連れ出してもよいだろうかと尋ねる。
すると、驚いたことに二つ返事で承諾を得ることができた。
もっとも、侍女たちの監視つきではあるが。
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