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Xサマは恨みの篭った声でそう言い、俯きがちに頭を振った。
「まあ、手記が売れたおかげで引っ越し代には困らなかったが。少なからず同じ趣味を持つ仲間も出来たし、この家もその知人のものだ」
私もXサマの仲間の一員に加わりたい。けれど、勝手に話すなと言われたので口を噤んだ。押し黙る私を見て、Xサマは何かを察したのか笑いかけてきた。
「お前たちのように小動物を殺して動画を投稿したり、裁かれるために事件を起こそうとしたりとか、そういうのはもう懲り懲りなんだ」
私の唇に人差し指を当て、下唇から顎へ首筋へと緩やかに這わせて――首を掴んで絞めてきた。
「ここは地下室だから誰の声も届かない」
彼は右手に左手を添え、更に力を込める。
「俺はもう捕まりたくない。メディアを騒がせたくもない。裏の顔は表には出さず、人目につかない場所で静かに人殺しを楽しみたいんだ」
屈託なく笑う彼の手の中で、私は闇の中へと堕ちて行った。
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