clap for the wrong reasons

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 流行りのデートアプリで興味を持った相手からの最初のメッセージは、思春期に見た犯行声明そのものだった。 さあゲームの始まりです 愚鈍な警察諸君 ボクを止めてみたまえ ボクは殺しが愉快でたまらない 人の死が見たくて見たくてしょうがない 汚い野菜共には死の制裁を 積年の大怨に流血の裁きを SHOOLL KILL 学校殺死の酒鬼薔薇  1997年に起きた中学生の凶行――神戸連続児童殺傷事件。酒鬼薔薇聖斗と名乗る少年が自ら殺めた男児の生首に犯行声明文を銜えさせ、小学校の正門前に置いたことで世間を賑わす大事件となった。その声明文がスクールの綴り間違いも当時のままに送られてきたのだ。  思えばアプリ内での自己紹介文からして妙だった。 “私は1982年生まれのサイコパスで同い年の犯罪者を愛するハイブリストフィリアです” SNSから位置情報を判断し、近くにいる人同士で会話ができるデートアプリを使って書かれた彼女のプロフィール。普通じゃないな。  サクラが少なくて実際に会える確率も高く、暇な女子大生やОLにも人気らしいと知り合いに紹介されてインストールしたそれは、一昔前の出会い系サイトみたいなもので。簡単な自己紹介を書いて登録したら、現在地から近くにいるユーザー順にマッチングが始まる。  スマホには相手の写真とプロフが表示され、気に入らなければ画面をスワイプし、興味のある相手には『いいね』を押す。そうして互いにいいねをし合ったユーザー同士で会話を始められるシステムだ。  似たり寄ったりのつまらない自己紹介が続く中、サイコパスを自称する女性・B子(仮称)を見つけて興味が湧いた。まともな人間ならスルー確実の痛い自己PRをするB子に悪戯半分でいいねをしたら即犯行声明が届いた。 “酒鬼薔薇聖斗サマも1982年生まれって知ってました?”
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