夢の人

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 誰でも秘密という物が一つはあるものだ、もちろん僕にもある。  失敗談?  嘘?  性癖?  人によってさまざまだろう。  また、言わない理由も同じだ。  笑われるから?  馬鹿にされるから?  人を傷つけてしまうから?    僕の場合は秘密の内容自体がどうしようもないぐらいくだらなく、話をしたところで意味もなさないということを理解しているからだ。そもそも信じる人なんていないだろう。秘密にしているというよりも、他者に伝えたところでまったく意味がなさないため秘密になってしまっている、と言った所だろう。多少なりの妄想癖はあるが、これは事実である。  誰が信じるだろうか、『人の夢が見れる』ということを。  先に言うならばここで言う『人の夢』は将来の夢とか理想にあたるような夢でなく、人が眠るときに見る夢である。  方法は簡単だ。自分が寝ると他者の夢を見れる、自分が上空に浮いているような視点で他者の夢を見るのだ。干渉することはできない、ただ見るだけ。誰の夢かは決められず、夢の内容でなんとなく察することができる程度だ。  気がついたのはごく最近で、去年の夏ごろ。大学一年のときだ。登山サークルに入った僕は夏季練習という名目のキャンプを行っていた。まだ登山用品に慣れていない一年生のためにファミリー向けのキャンプ場で行われ、道具の使い方、テントの張り方などの基礎を行い一泊ほどして帰るのだ。  たしか帰り支度の途中、テントを片付けているときに同室テント内にいた人物、佐々木がたまたま昨日見た夢の話を始めた。『夢の中でもキャンプしてたよ、楽しかったな。』という彼の話を細かく聞くうちに、自分の夢と一致していることに気がついた。  そのときは気にも留めなかったが数日後、退屈な講義中にうとうとしていると似たような夢を見た。もちろん佐々木も同じ講義に出席しており、同じように寝ていたそうだ。  その後はトライ・エラーの繰り返し。夢を見るたびに誰の夢か目星を付け、それとなく聞いてみる。家族・友人とさまざまな夢を見た後、半年後には他人の夢を見れているということに結論づいた。  夢を見る条件はいたってシンプルだった。相手と自分が眠っていること、自分は寝る前になるべく夢を見たい相手を意識しておくこと。この二点だ。
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