夢の人

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ずいぶんと退屈な夢だ、しかし山田という人柄は良く出ている気がする。退屈であってもぼんやりと眺める以外できることは無い、自分が目覚めるまでひたすらこの夢を見続けるしかないのだ。  よくよく観察していると少々不思議なことに気がつく、一人の人物にだけ声をかけていない。山田よりも少し高めの背丈、痩せ型でスーツを着ている。何かに困っている様子は無く、写真のように動かず立っているだけだ。  山田が気づいていないわけではない、その人物と目を合わせるがすぐに山田は目をそらしているのだ。  不思議にも思っていたが徐々に考えは変わっていき、最終的には人が良くても苦手な人物の一人や二人いるものだろうな。と結論付けていた。  不意にすべてが暗くなる。  ようやく目覚められるのか、そう思い体を起こすと現実世界に戻ってきていた。  時計を眺めると目覚ましが鳴る10分前。ゆっくりと体を起こし軽くストレッチをする、歯を磨いて制服に袖を通す、最後に鏡の前で身だしなみをチェックする。もう少しで仕事が終わるという気持ちもあり、自然と気合が入りながら休憩室を出た。  その後はイレギュラーなことは何も起こらず、終了時間きっちりに仕事を終えることが出来た。帰りにアウトドアショップに寄りカタログを貰って、自宅であるアパートに戻った。  夜勤に備えカタログを見ながらうとうとと眠りにつく。昼の時間であるため近くで寝ている人はいなかったのだろう、夢は見なかった。
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