運命

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 ふと何気なく隣りに視線を移してみると、ひとりの女性が座っていた。  僕と歳は同じくらいだろうか。肩あたりまで伸びた髪を後ろで1つにまとめている。所謂ハーフアップと言うやつだろうか。  白いスカート、上はデニム地のシャツを羽織っている。色白で一見して可愛らしい、お嬢様の様な雰囲気だった。どちらかと言えば、"前の方の席"に座っていそうだ、とも思った。  翌日も、その翌日も、彼女は同じ席に座っていた。自分から左側に3つ離れた席。  1つ席を近づけてみたい、話してみたいという思いがなかった訳では無いけど、そんな度胸は無いし、なにより、誰かと親しくなることはメリットよりデメリットの方が大きい。  今くらいの距離で十分だったのだ。   彼女はいつも1人だった。  誰かと約束している様子でもない。講義が終わると"僕達"は同じように、さっさと講義室をあとにする。  偶然のように同じ方向に歩いていくが、彼女が誰かと会っている風景を見たことは無かった。  だからといって、僕と彼女が同じ世界の人間だとは思わなかった。  置かれている境遇がまるで違うように思えた。
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