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「お邪魔します」 建石はおそるおそる玄関からアパートの部屋の中へ入る。建石が現役女子大生の部屋を訪れるのは8年ぶり。当時交際していた女子大生の部屋を訪ねて以来だ。 部屋の中はきれいに片付けられており、ベッドの上にはウサギとネズミ、そしてアヒルのキャラクターのぬいぐるみが置かれている。いかにも女の子の部屋だ。 「今回は突然すみません。建石と申します。よろしくお願いします」 建石は名刺をまこちょこタンに渡すと、まこちょこタンもぎこちなく名刺を受け取る。動画投稿でいくらカメラ慣れしているとはいえ、やはり正規のカメラマン、音声、照明、記者の4人を目の前にする機会は今までなく、緊張の色は隠せない。もっとも、建石は威圧感を軽減すべく、事前に照明と音声は女性のスタッフに担当させるよう手配していた。 到着から5分後、技術スタッフがセッティングを終え、いよいよインタビューが始まった。 「早速インタビューに入らせていただきます。よろしくお願いします。今回、このようなツイートをなさったのにはどういった思いがあったんですか?」 建石はまこちょこタンに問いかける。 「このまま何もせずに終わらせるのは嫌だった、というのが理由です」 「嫌だった、というのは?」 建石は矢継ぎ早に訊く。 「今回の選挙、私達は完全に置き去りにされていました。自滅党はスキャンダルを隠蔽するために解散しました。何のために税金を使って選挙をしたのか分からない。それに民沈党と誹謗の党だって自分たちの議席を失わないことしか考えていないのがどう見ても明らかでした。だから、私は本当に悲しかったんです」 悲しかった、という言葉が出た瞬間、建石はうなずいた。そして 「悲しかった、というと?」 と尋ねる。 「苦しんでいる人がいて、大きな問題を抱えていて、それでも自分たちのことしか考えない人たちが日本を背負っている、この状況を指をくわえて見ているしかないのが本当に悲しかったんです」 まこちょこタンはそういった後少し呼吸を整え、再び話し始めた。 「私は地元が福島の会津地方なんです。福島は東日本大震災で大きな被害を受けました。会津は比較的被害は少ないほうだったのかも知れません。でも、私たち会津の人間も、かなりの打撃を受けたんです」 「打撃、ですか」 「はい。風評被害です」 建石の問いかけにまこちょこタンは一度うなずき、そう答えた。
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