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まこちょこタンは話を続ける。
「会津のコシヒカリは、本当に美味しいんですよ。新潟と気候が似ているからでしょうか。新潟のコシヒカリにも劣らないくらい美味しいんです。でも、そのコシヒカリが売れなくなった。原発事故のせいです。私の友達の中には家が農家の人もいました。彼女はこれがきっかけで実家の収入が激減し、結局大学の進学を泣く泣くあきらめたんです。一緒の大学に行きたかったのに。私の地元だけでもこうやって悲劇は起こっている。ましてや原発があった地域はなおさらです」
カメラマンがちょこまこタンの表情にズームインする。
「それだけのことがあったんです。それなのに日本は核兵器を容認しようとしている。ヒロシマ、ナガサキ、第五福竜丸、そして福島原発。これだけ核の恐ろしさを知っているはずの日本が、原子力を人殺しの道具にすることを容認しようとしている」
「でもそれなら、核を反対している政党に入れれば事足りる話ではないですか?」
建石はまこちょこタンに問いかけた。まこちょこタンは首を横に振った。
「一番問題なのは、こんな重要なことが選挙の演説で触れられていないこと。触れられたとしても、当たり障りのない言葉でうやむやにされてしまっていること。そして仮に明確だったとしても、選挙の後になると簡単にその公約が裏返ってしまうことだと思うんです。中身のない演説、中身のない運動、選挙のための選挙、私には失望感しかないんです。これは原発や核兵器、憲法の話だけでないと思います。私たちの未来が、ただの足の引っ張り合いゲームで決められてしまうなんて、悲しすぎる」
そう話したまこちょこタンの表情は一度伏目がちになったが、また明るい表情に変わった。
「だから、私たちの未来は、私たちで手にしよう、って思ったんです。今は私たちには力は無い。でも、少なくとも今の政治自体にNOを突きつけることはできる。票さえ入ればそれでいい、議席さえ取れればそれでいい、議員年金さえ貰えればそれでいい、こんな政治にNOを明確に突きつけること。私にできるそのちょっとしたことをやりたいと思い、このツイートを思い立ったんです」
そう話し終わると、まこちょこタンは小さく頷いた。
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