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「矢口さん、ちょっといいですか?」
「どうした?何か掴めたか?」
矢口は建石にたずねる。
「実は大谷君から面白い情報を聞いたんです」
「何だ?」
矢口が大谷に尋ねると、大谷はスマートフォンを見せた。そこには、いいねの数が十万件以上、リツイートの数が五万件以上の動画付きツイートが表示されていた。
「これは?」
「はい。無効票の投票を促すツイートです。動画の背景に流れているのはarchitectというタイトルのアニメソングです。自分の人生の建築者になれ、というメッセージが込められています」
矢口は大谷のスマートフォンを覗き込み、動画と一緒に投稿されていたメッセージを読んだ。
「今回みんな、絶対に選挙に行きましょう。どの政党も嫌いなら、無効票を投じましょう。とにかく足を運びましょう。私たちの人生は、私たちの未来は、私たちでつくる。自分勝手なあんな人たちに、私たちの未来をつぶさせてはいけないと思います。私はちゃんと無効票を投じてきます」
「これは、誰の投稿だ?」
矢口は大谷に尋ねた。
「まこちょこタンです」
「は?」
矢口は訊き返した。
「まこちょこタン、ご存じないですか?仙台を中心に活動するローカルアイドルですよ。チョコと牛タンが大好きだから、この名前にしたらしいです。あ、私ツイッター相互フォローしていますよ」
大谷はそう答えた。
「その人は、どこの人間だ?」
「仙台市内に住んでいますよ。東北大学の2年生です」
「よし、大谷君。忙しいところ悪いが、何とか連絡をとってみてくれ。そして連絡が取れ次第建石君は事実確認を。もし本当にこのコのツイートが発信源だったら、すぐにカメラマンと音声を連れてインタビューを取ってくるんだ」
「はい。分かりました」
建石はそう言うと、報道番組部の部屋をあとにした。
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