キャリアと刑事

4/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ナイチンゲール生まれ変わりだって!?すごいな!」 「なあ、何かおぼえてる事はないのか?」 殺人課への顔見せ。案の定、キャリアで美青年で、ナイチンゲールの生まれ変わりで天使(笑)な斗桐は人気者になっている。 先輩たちに囲まれる斗桐から離れて、俺はぽつんと立っていた。 先輩刑事たちは、驚くほど、いい人たちだった。 俺の前世を知って、根掘り葉掘り訊かれるのは嫌だろうと、そっとしておいてくれるのだ。 「守、パロットマーケット殺人事件のこと、知ってるか?」 「なんですか、それ」 手持ち無沙汰にしていた俺に、教育係の立向さんが声をかける。 「おいおい……今ニュースはそれで持ちきりだろ」 「すみません、テレビは高くて買ってなくて……」 「刑事がそれじゃ困る。テレビをすぐ買って、新聞も全誌とれ」 「はい」 パロットマーケット殺人事件。 一ヶ月前から起こっている、連続殺人事件だ。 監視カメラがしっかりと置かれているスーパーマーケットの中で、人が殺されるという事件。 それだけならば、まあ、『ありえる』事件なんだけど……。 問題は、殺された人が、バラバラにされて、精肉売り場に陳列されることなのだ。 被害者に共通点は無し。たまたまその日にスーパーに買い物に行っただけ。 どこかで殺されて、陳列されたのではなく、スーパー内で殺されたうえ、バラされているというのが、『不可能犯罪』なのだと、立向さんは語った。 俺はそれをきいて――拍子抜けした。 「え、簡単じゃないですか、そんなの」 ぎょっとして立向さんが俺を見る。 「スーパーの監視カメラの映像と、現場を見てみないと断定できませんけど、多分、その死体、関節や内臓ごとにバラされてたんじゃないですか?」 「そ、そうだが……お前知らなかったんだよな、この事件?なんでガイシャの死体の状態、そんなに詳しいんだ?」 「え、だって人間をバラバラにするのは、とても大変じゃないですか。だから短時間でバラすなら、切りやすい場所をおぼえて、的確にやらないと」 立向さんが不気味なものを見る顔で俺をみて、少し俺は傷ついた。 「あ……すみません、生意気言って」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!