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「ナイチンゲール生まれ変わりだって!?すごいな!」
「なあ、何かおぼえてる事はないのか?」
殺人課への顔見せ。案の定、キャリアで美青年で、ナイチンゲールの生まれ変わりで天使(笑)な斗桐は人気者になっている。
先輩たちに囲まれる斗桐から離れて、俺はぽつんと立っていた。
先輩刑事たちは、驚くほど、いい人たちだった。
俺の前世を知って、根掘り葉掘り訊かれるのは嫌だろうと、そっとしておいてくれるのだ。
「守、パロットマーケット殺人事件のこと、知ってるか?」
「なんですか、それ」
手持ち無沙汰にしていた俺に、教育係の立向さんが声をかける。
「おいおい……今ニュースはそれで持ちきりだろ」
「すみません、テレビは高くて買ってなくて……」
「刑事がそれじゃ困る。テレビをすぐ買って、新聞も全誌とれ」
「はい」
パロットマーケット殺人事件。
一ヶ月前から起こっている、連続殺人事件だ。
監視カメラがしっかりと置かれているスーパーマーケットの中で、人が殺されるという事件。
それだけならば、まあ、『ありえる』事件なんだけど……。
問題は、殺された人が、バラバラにされて、精肉売り場に陳列されることなのだ。
被害者に共通点は無し。たまたまその日にスーパーに買い物に行っただけ。
どこかで殺されて、陳列されたのではなく、スーパー内で殺されたうえ、バラされているというのが、『不可能犯罪』なのだと、立向さんは語った。
俺はそれをきいて――拍子抜けした。
「え、簡単じゃないですか、そんなの」
ぎょっとして立向さんが俺を見る。
「スーパーの監視カメラの映像と、現場を見てみないと断定できませんけど、多分、その死体、関節や内臓ごとにバラされてたんじゃないですか?」
「そ、そうだが……お前知らなかったんだよな、この事件?なんでガイシャの死体の状態、そんなに詳しいんだ?」
「え、だって人間をバラバラにするのは、とても大変じゃないですか。だから短時間でバラすなら、切りやすい場所をおぼえて、的確にやらないと」
立向さんが不気味なものを見る顔で俺をみて、少し俺は傷ついた。
「あ……すみません、生意気言って」
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