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解を求めよ
三限の線形代数学に現れた親友を、オレは二度見してしまった。
「みっちゃん髪型変えたの?」
「……変かな?」
充郎(みつろう)が不安げに聞き返したのは、オレの眉間の皺に気付いたからだろう。事実、オレは気に食わなかった。鉄オタ仲間の充郎は、昨日図書館で別れた時は俺と同じ冴えない銀縁メガネのオタク感満載の長髪だったのだ。なのに一晩経ったら、髪を明るく染めた上にパーマまでかけている。
「メガネは?」
「コンタクトにしたんだ」
面映ゆそうに笑む充郎は、正直びっくりするほどカッコ良くなっていた。
「……へぇ」
「似合わないかな?」
「……別に変じゃねぇよ」
平静を装いながら、ちらりとスマートな姿を盗み見る。小さな円を描いて跳ね上がった髪は明るい栗色で芸能人みたいだ。服も百貨店のマネキンが着てそうな、ビシっと決まってるやつ。いつもの量販店のジーンズとTシャツじゃなくて、シンプルだけどちょっと高そうなシャツとパンツだし、ベストなんて小道具といい、別人みたいだ。
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