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度の強いレンズで小さく見えていた目は、本当は大きくて綺麗な二重なのは知っていた。一緒に鉄オタ旅行に行ったときに、立ち寄った日帰り温泉で見てちょっと驚いたから。九州でしか走っていない800系新幹線に乗れた興奮と相まって、妙に頭に焼き付いたので良く覚えている。後ろで一つに結わえていた髪が解かれたときの男臭さといい、充郎の元がいいのはなんとなく分かっていた。
いつもなら充郎のそばならどこだって安心するのに、今日は違う。今日の充郎と、中学生に間違えられるくらいの童顔と低身長のオレとでは、凸凹コンビと揶揄されるに違いなかった。鉄道という共通の趣味があることなんか些細なことに思えてきて、充郎の親友はオレだという自負がみるみる萎れてゆく。
カッコイイ奴の周りには自然と見た目に自信のある連中が集まるもので、充郎にそっちの友だちが出来たか、もしくはこれからあっちのイケてるチームに行ってしまうんだろうと予想してため息が出た。
自分がオタクチームに残される寂しさもあるけれど、自分から充郎が離れてしまうんじゃないかって不安が一番こたえる。
もちろん顔に出すほど子どもじゃないけど、でもちょっと恨めしい目つきにはなっているかもしれない。
「色々変えたんだけど、紘太(こうた)どう思う?」
充郎はいつものようにオレの隣に座ってノートを広げる。親友が知らない別人みたいでちょっと落ち着かない。
「どうって?」
「服とか髪型とかさ」
「……いいんじゃねぇの」
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