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時計を見れば深夜二時。明日が休みだからと、ちょっと張り切り過ぎたかもしれない。数学をやり始めれば、どんな見た目だろうと充郎はいつもの充郎で、なんだかほっとした。調子に乗ってしまったのはそのせいもある。
「充郎、なんか食わない? カップラーメンならあるよ、10個」
充郎のオムライスはうまかったけれど、日付が変われば腹が減る。オレはシンクの下から買い置きのインスタントラーメンを取り出した。
「ミルクシーフードとレッドシーフードどっちがいい?」
「10って二進数かよ。それにシーフードばっかじゃん」
白と赤の二つのパッケージを手に、「あ、ほんとだ」と呟く。
「……お前の好みってどんなのか聞いとけばよかったな」
「シーフードかぶりはたまたまだって」
「明日からまたいつもの服に戻そうかな」
急な話題の変わり具合に面食らいながらも、すっかり機嫌を直した俺は素直に充郎を褒める。
「なんで? すごく似合ってるよ。充郎の素が良いのは知ってたけど、やっぱちゃんとした格好すると、なんつーか眩しいくらい。もっともイメチェンしたって、数学科の女子は片手で数えられるくらい少ないけどな」
カップラーメンの包装を破っていたら、充郎もキッチンに立って手伝ってくれる。
「紘太が面白くなさそうな顔したから」
「え? オレ? それは、だって……」
「だって?」
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