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それのどこが絶対条件なんだと首を傾げたたら、充郎に苦笑された。大人っぽい苦さが滲んた笑い方は、なぜかオレをどぎまぎさせた。
「まどろっこしいな。こういう意味」
充郎が薄くて形のいい唇でオレに触れた。ぽかんと間抜けにひらかれたままの唇に。
抽象的なもの言いは苦手だ。求められる解を明らかにせずに放置しておくことは我慢ならない。とっくに出ている答えを先延ばしにするのなんか、理解できないどころか大嫌いだ。
「マジでいいの?」
「なんだよ。文句あんのかよ」
二人の唇の間を、唾液の糸が繋いでいる。延々と交し合ったせいか、薄い皮膚はひりひりと痛んだ。
キスが痛いだなんて知らなかった。これからもっと知らないことが、オレの身に起きる。今は知らないけれど、答えはすぐそこまで来ている。
「文句ないどころか夢みたいに嬉しい」
嬉しそうに笑みを浮かべる充郎の顔を正面から見られない。
素っ裸で股おっぴろげて、その間にヤツがいるとか、恥ずかし過ぎるだろ。
「紘太、ありがと。優しくするから」
優しいキスと反対に、えげつないモノがあてがわれる。その熱さに眩暈がしそうだ。
「ちょ、ちょっと! やっぱ待……あぁっ……みっちゃんダメっ」
「名前で呼んで」
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