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1章
「さぁ、どうします?」
運命と正義、どちらを選ぶのか。
妖艶な獣が、魅力的に笑いながらこちら側へ墜ちてこいと甘く囁いた。
◆
◆
◆
「突入まで五秒、四、三、二…………着手っ!」
怒鳴るようなかけ声と共に、待機車の扉が勢いよく開け放たれる。
十台以上のワゴン車から五十人は超えるであろう屈強な男たちが飛び出したのは、ほぼ同時だった。
『一、二班、屋上出入口前に到着。突入準備完了』
『三、四班、六階・七階部の出入り口全封鎖完了』
『五、六班――――』
突入から数分もしない内に、続々と報告がイヤホンから飛びこんでくる。先発隊の刑事たちが、指定暴力団・桜津組の薬物取引が行われているという屋上に無事辿り着いたらしい。これで相手は袋の鼠も同然だ。
一階部を任されている九班所属の綿貫霧人は、廃ビルの入口で中へと入る順番を待ちながら、今夜の捕り物である桜津組幹部の逮捕を確信する。
と、そこへちょうど隣に来た佐山雅之が、小声で声を掛けてきた。
「初めての現場だろ。緊張してないか?」
「平気です」
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