舌打ち

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 ベッドの中でとても怖い話を聞いた。 「受験勉強のさなか、ほんの休憩のつもりで、そのまま床に寝転がってしまったの。私、そのまま眠ちゃって。そしたら子供とも女の子ともわからない声が聞こえてきたの」  おい。そっちはどうだ  まだだ。もう少しかかるぞ  早くしろ  本当にやるのか  やるさ  でも、痛いぞ  ああ、痛いさ  それでもやるのか  やるとも  あの子がいけない  あの子が悪い  やってしまえ  そうだ。やってしまえ 「その声は私の頭の上、部屋の窓に面した勉強机のあたりから聞こえてきたわ」  グチャグチャだな  ああ、グチャグチャだとも  無残だな  ああ、無残だ 「ひそひそ声の主は3人か4人か、もっといたかも」  仕方ないよ  そうだ、仕方がない  あの子が悪いんだ  そうさ。あの子がいけない  始めるか  始めよう  終わりだな  ああ、終わりさ 「私、怖くなって飛び起きたら、天井から照明器具が落ちてきたのよ。もしあの声を聞いていなかったら、私の顔の上に落ちていたわ。だから最初は姉の人形の声に助けられたと思ったの。でもその時、別の音がしたのよ。誰かが「チッ」と舌打ちをする音――それはね。お姉ちゃんの癖なのよ」  彼女は姉の持っているものを何でも欲しがる癖があり、人形やアクセサリーやバッグなど。気に入ったものがあると、強引に取り上げたという。 「人形を奪って顔をつぶされかけたのよ。彼氏を横取りしたら、どんなことになるのかしらね。こわーい」  彼女は微笑む。僕の脳裏には妻の舌打ちが聞こえてきた。
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