4.真意

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北朝鮮の脅威が増している今日、自衛隊が手足を縛られ軍隊として機能できない状態で日本を防衛できるか、まともな頭を持つやつだったら懸念する。国民にしたって、大半は自衛隊が必要だと思っている。 彼女はしたたかだから、無論選挙中にそんな議論はしない。本来だったら国民党という政党名と一緒に消え去るべきだった議員の応援に駆けつけて恩を売り、議席を揃え、首相になったところで改憲発議する」  確かに、その可能性は、ないとはいえない。  野望の亡者だとか陰口を叩かれている大畑祥子は、もしかしたら誰よりも国難を打開する方法を真摯に考えているのかもしれない。  もし吉田首相が本心ではそんな知事を勝たせたいと思っているのだとしたら、それもまた彼なりの、大義に生きる、という道かもしれない。  乃理子はおもむろに口を開いた。 「それは、勇気は日本の議員達に、まだ多少期待している、ということね」 「当たり前だろう、それでなきゃこんな夜討ち朝駆けの商売はやっていられないさ」  彼の笑顔がちょっと眩しく見えた。
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