2.激震

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 そのネット記事は、大畑知事のブログから昨日削除された文章を指摘していた。知事が安全保障専門家との対談をアップしていたページだ。 「どっちにしろ、核兵器と原発は全く関係ないじゃない」  選挙で票を獲得する為にだけ電源政策を利用する政治家は嘆かわしい、と乃理子は溜息をついた。  東日本大震災の原発事故以来、反原発を唱えるのが先進的リベラルである、といった論調がメディアを席巻している。  しかし太陽光や風力発電は、補助金を付けたところで日本の自然環境では限界的で、地球温暖化を真摯に懸念するのであれば、二酸化炭素を排出しない原発の有効性は勘案すべきである。反原発団体に騒がれたくないからと、その事実を十分に説明してこなかった電力会社や経産省の責任も重い。  一方、国民党を従来からバックアップしてきた連合は電力労組を抱え原発容認派なので、日本新党の原発廃絶がどれほど本気かはわかりかねる。  頭を切り替え、乃理子は国民党総会の記事を書き続けた。  政権を打倒するためには何でもする。国民党という名を捨ててでも、政権交代が可能な二大政党実現に向けてどんな手法をも模索する・・。  芦原代表の言葉は、政策は二の次で先ず選挙に勝つため死力を尽くそう、との覚悟だ。  確かに、選挙に負けてしまえば政治家はただの人、選挙に勝って数を揃えなければ無力だが、政党というものはそれでいいのだろうか。ビジョンや政策を分かち合う議員が集い、それを追求するのが政党のあるべき姿のはず。  乃理子がふと疑問を洩らすと、勇気に笑われた。 「それは理想論だ。与党大成党の中にも右寄りから左寄り、けっこうリベラルな議員もいる。国民党はもともと幾つかの政党の残党が終結したわけだから、ほとんど左翼の議員もいれば、代表みたいに中道派も多いだろ。 取りあえず一緒に闘おう、と言うぐらいのノリで、必ずしも一枚岩ではない。だから、国民党の看板では選挙に勝てない、と危機感を持った連中がザクザク離党したわけだ」 「でもやりたい政策がはっきりしないのなら、なんで議員やってるのか、ってことよね」 「そりゃ、大臣になりたいからだろう?」  サクっと言ってみせた勇気をにらんでやったが、そのあたりが本音の議員もいるに違いない。
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