2.激震

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 どの議員も耳に心地良い綺麗事を言うが、この平和な時代、政治家として自分はこれがやりたい、こうして国の安寧・繁栄をはかり国民生活を改善すべく政治生命を賭ける、との固い信念で動いている議員が、どれほどいるだろうか。  はたして、一人でもいるだろうか。 「大畑知事が旗揚げしたのも、このチャンスをモノにして初の女性総理になりたいからさ」  勇気の言葉が乃理子の胸にこたえた。十分にあり得る動機だ、と思わざるを得ないからだ。  人間というのは自分の益になるために動く、働く。政治家も職業の一つに過ぎず、彼らにだけ国家的展望やら普通の人より高尚な心構えを求めるのは、無理な願いかもしれない。  総理の椅子を狙うには、知事職を辞して衆院選挙に立候補する必要がある。府知事選で大旋風を起こしたぐらいだから立候補すれば当選するであろうが、選挙日程から推し量っても、知事を退職する決断は数日中になされなければいけないはずだ。  仕事を途中で放り出した、との批判をダメージコントロールする為に、前倒しで決断する可能性が高い。  乃理子が予測していると、国民党両院懇談会終了、との知らせに控室のジャ―ナリスト達がどよめいた。  満場一致、日本未来党との交渉は芦原代表への白紙委任、との知らせに、うなずく者、首を傾げる者。  考えているヒマはない。退場する議員達に取材すべく乃理子と勇気も部屋を飛び出した。
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