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 社食でそう切り出すと、吉村はコショウをラーメンに振りかけながら聞き返した。 「社長? 誕生日か何か?」 「……なんで分かるんだ」 「顔に出てるから。そんな憂鬱そうな顔で兄ちゃんに会うなよ。ていうか、誕生日に一緒にケーキとか食べる仲なの?」 「そんなわけないだろ。近々話をしたいと秘書の人に言ったら、誕生日が近いって教えてくれたんだ。ここでいい印象を持ってもらいたい」 「そうやっていいとこだけ見せようとするから打ち解けられないんだろ。どっかの店予約して飯食ってくれば? あんまりこう『出来る』店だと真上の差し金だと思われそうだから、ちゃんとおまえが考えたとこがいいと思うな」 「馬鹿なこと言わないでくれ。社長と向き合って一時間も二時間も食事するなんて、胃を悪くする」 「ひどいこと言うなよ……。そこまで冷たい人じゃなさそうだけどなあ。……まあ変わってはいるかもだけど」 「吉村も一緒に来るか? 新人だった頃、同期でひとりよくしてくれるやつがいるって話したら、いつか会わせてくれって言ってたぞ」 「何年前だよ」  吉村が苦笑する。  六年前だ。そんなにも前のことを今でもはっきり思い出せるのは、単純に、兄と交わした会話が少ないからなのだった。     
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