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そのお母さんとお父さんは、男の子が生まれたら「とんた」と、女の子が生まれたら「とんこ」と、そう名付けることに決めていた。
なぜ「とん」の二文字にこだわったのか。それにはきちんとした理由がある。
「とんとんと拍子にのって成長し、とんとんと螺旋の階段を昇るように高く立派に大きくなるように。そして時にはとんとんと私たちの疲れた背中を叩いて癒す、そんな優しい子になってほしいから」。
そういった理由である。ただそれを他人に話したときはみな笑った。お母さんとお父さんは、この名前に決まるまで三日三晩寝ずに考えたっていうのに。
それからそうして。
生まれてきたのは愛らしい女の子だった。だから名前は「とんこ」になった。
お母さんとお父さんは、生まれたばかりのとんこをダイニングテーブルの真ん中に乗せて、めでたいめでたいこりゃめでたいと舞い踊った。くるくるくるくると、とんこを中心にして回りに回り、踊りに踊ったお母さんとお父さん。そんな、愉快でお気楽な二人だった。
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