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スターフィッシュ計画は、年を越すと話題に上らなくなった。風が止んだのだ。
マスコミは熱しやすく冷めやすい。スポンサーを集めにくい原発事故のニュースは経営的側面からは無価値だからだ。多くのマスコミ関係者は、国民が関心を持ち、スポンサーがつく情報に意識を向けざるを得ない。
人の意識を物事から遠ざけるのは、経済的無価値だけではない。慣れもその一つだ。
スターフィッシュ計画に携わる技術者の意識は、世間の評価や初体験の緊張から、別の一点に集中していった。格納容器の底に溜まったデブリ一点に。そして沈殿物が撹拌され水素ガスが発生していることを見逃していた。スターフィッシュ搬入用レール設置時に移設した可燃性ガス・センサーの設置場所も悪かった。
2030年3月。
ドーンという爆発音とともに原子炉建屋が揺れた。離れた所に設置されたコントロールルームも揺れ、バタバタバタと屋根の上に飛散した建屋の部品が降った。
スターフィッシュを吊り下げたレールはねじ曲がり、スターフィッシュの足も踏ん張りが効かずに格納容器の底に落ちて動かなくなった。最悪だったのは、デブリ吸い込み管が砕け散り、デブリの粉が原子炉建屋周辺に飛び散ったことだ。
デブリ回収に光明が見えたと考えていた関係者は、奈落の底に突き落とされた。
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