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久住に身体を暴かれながら、何で抵抗しないんだと詰られた。苛立たれ、強引に突き立てられ、それでも何も言わない誉に後悔を滲ませながら責め立てた。
「〝おまえが悪い〟って言っただろ…。それでいいんだよ。久住は何も悪くない。でも…もう、俺のことは放っといてくれ」
誉は踵を返すと逃げるように教室を出て行った。久住は追いかけて来ることはなかったが、空き教室の方から何かをぶつける音がした。
階段まで来たところで誉は手すりに寄りかかる。身体のあちこちが痛み、貧血を起こしているのか目眩もする。痛みを逃すように息を深く吐き、その場に立ち止まった。
このままでは久住と蜂合わせてしまう。
特別室は四階で、今居る場所は二階だ。荷物を取りに四階まで一度は行っても、こんな体ではすぐに追いつかれるだろう。一瞬荷物を置いて帰ることを考えたものの、財布や定期券を置いては帰れない。
スマホを取り出し確認すれば十七時を過ぎていた。別校舎の特進クラスならまだ生徒も残っているだろうが、この校舎にはもう戸締まりしている教室ばかりで隠れる場所もない。
背に腹は代えられない。
誉は手すりを握りしめながら階段を下りる。
スマホに新しく登録したアドレスを呼び出しメールを打つと、剣道部の練習する道場までふらつく足で向かった。
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