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 加藤の後を追いすがりながら尋ねれば、すかさず目を眇めて返してくる。完全に主将モードではないらしい。 「顧問に頼んでおくからそのあたりは気にするな。あと──、具合悪そうだけど大丈夫なのか?」  加藤は部室の前に辿り着くと、ノックもなくドアノブを引き、入れと目配せする。緊張しながら室内へ入り見回せば、男子の部室とは思えないほど整理整頓されていた。 「できれば羽織れるもの貸してくれるかな?」  室内は外に比べれば雲泥の差で暖かい。しかし加藤を待つ間に身体が冷え、手足が思うように動かなくなっていた。  聞くや否や左右の壁に誂えた格子状の、二十個ほどある荷物置きから自分のコートを取り出し、加藤は誉に投げ寄越す。うまくキャッチ出来ずダッフルの重みが頭にかかり、誉はもぞもぞと顔だけ出して礼を言う。 「ありがとう。あったかい」 「礼はいらんから休んでろ」  確か座布団があったはず、加藤はそうぶつぶつ言いながら探し出すと、誉に座るように促し、部室を後にした。  加藤のコートを肩に掛け、座布団の上に猫のように丸まりながら横になる。  久住に暴かれた体が痛くて姿勢を変えるたび息を飲む。今は冷えすぎて痛さも緩和しているものの、やはりダメージは大きかった。  しかしそれを上回るほど心は空っぽで、何も感じなかった。     
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