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 勝手な妄想だ。  顔を合わせることも言葉を交わすことも怖いくせに、待っていてくれれば嬉しいと、心のどこかで思っている。拒絶したのは自分の方なのに。 「とりあえず行こうぜ」  加藤は突然そう言って、誉の二の腕を掴むと建物の中へ歩き出した。 「いや、待って。ちょっと待って。違うんだってば。一緒に荷物を取りに行くんじゃなくて、加藤に行ってもらいたいんだ」  誉の言葉は聞こえてるはずなのに、加藤は鼻歌まじりにぐいぐい引っ張っていく。 「ほんとに困るから…って、もう、離せ筋肉ばか!」  悪態をぶつけて思い切り手を振りほどくと、加藤はぶはっと思い切り吹き出した。 「いいじゃん。その調子でもっと罵ってみて」  にやにや笑う加藤にむっとして何か言い返そうかと思ったけれど、何だか馬鹿馬鹿しくなってやめた。 「変態か」  かわりに一言罵った途端、加藤は爆笑して腹を抱えた。何がそんなに面白いのか全く理解出来ないものの、いつの間にか、誉もつられて笑っていた。    ***  学校から最寄り駅で加藤とは別れ、電車に乗り込む。左手には高校指定の革の鞄が提げられていた。この重みに安心するのは初めてのことだ。     
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