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 間合いを詰めるわけでもなく後ろからついてくる足音に、神経を尖らせながらも平常心を保とうとする。  誉の家はここからまだ歩いて十分ほどの距離にある。それまでにこの幹線道路から逸れて住宅街に入り込むから、益々心許ない。  どうしようかと考えあぐねながら誉はひたすら足を動かした。  走っててきとうに路地に入って撒くか、それとも自宅のある住宅街への道を通り過ぎ、少し先にあるコンビニへ駆け込む。もしくは電話しているふりで歩調を緩めて相手を先に行かせる。  考えてはみたものの、どれも失敗しそうで踏み切れない。万が一誉が想像している人物が後ろに居るのなら、なおさら慎重に行動しなければ何が起こるか本当に予想がつかない。 そのとき、握りしめたままだったスマホが、振動とともに着信音を鳴らした。電話の着信音なので親か姉が折り返し掛けてきたのだろうと思い、誉は相手も確認せずに急いで電話に出る。 「お願い、今すぐ迎えに来て!」 『…何があった?』  思いがけず返ってきた声の低さに驚いて慌てて液晶画面を確認すると、最悪な別れ方をしてもなお思い続けていた、久住からだった。  途端に頭が真っ白になって、何を言えばいいのか分からなくなる。 「……っ」 『おい、どうした』     
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