174人が本棚に入れています
本棚に追加
「誉クンはあの頃より少し、格好良くなったね」
しみじみと過去を懐かしむように、薄ら微笑む。坂上の目には今の誉と昔の誉が並んで見えているかのようだ。
「遥夏はキミがとても大事な弟であり、ライバルだと思っているんだ」
「…え?」
我が耳を疑うほど聞き慣れない単語が坂上の口から飛び出して、動揺する。
大事かどうかは別として、弟であることは事実だ。問題はライバルという言葉だ。
(遥夏が俺をライバル視?)
ありえない。むしろ見下されている。ヒールを履いたら物理的にも見下されていた。
まったく意味が分からず、怪訝な顔で坂上を窺えば大きく吹き出されてしまった。
「そういう顔はやっぱり似てるね」
「そういう顔?」
益々怪訝顔で問えば、手を伸ばし誉の眉間の皺を伸ばすように押さえた。
「遥夏も納得がいかないことを言われると、同じ顔になるよ」
「…はあ」
誉も納得がいかないが、第三者が言うのならそうなのだろうと渋々受け入れる。
「今まで嫌な目に合わせてごめん」
唐突に謝られ、咄嗟に何の反応も返せない。
「最初に〝妹〟だと紹介されたときから、遥夏の企みには薄々気付いてたんだ」
「え! それじゃあなんであんな…」
最初のコメントを投稿しよう!