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運が良かったことに、たまたま悪事を企てようとしているいじめグループの話を盗み聞くことができた。
こっそり後を付けて先回りすることにした。タイミングを計り、遥夏の前に飛び出した。
「きゃあ!」
「うわ、何で峰石が出てくんだよ!」
遥夏に投げつけられるはずだった絵の具入り水風船を、間一髪で誉が盾になって受け止めた。高校受験を控えている一月の寒空の下だった。
「はるちゃん濡れなかった?」
志望校受験とモデルの両立で大変なときだから、絶対に守らなければと思っていた。
「ばか! あんたが風邪引いたら…」
遥夏は言うなり鞄を投げ捨てハンカチを渡すと、いじめグループを睨みつけた。
「おまえら…小学生だからって何しても許されると思ってんのか…?」
「はるちゃん…」
「法的に潰すぞコラ! 親呼んで来い!」
そう遥夏が怒鳴るといじめグループは竦み上がって俯いてしまった。
「はるちゃん、服やばいから。母さんに見つかるとまずいから、ね」
帰ろう、と促して道ばたに投げ捨てられた遥夏の鞄を拾った。
残してきたいじめグループのことは知らない。
帰り道、遥夏の手を握り、家路を歩いた。
遥夏はずっと泣いていた。誉がそんなに泣かないでと言うと、以前から誉の異変に気付いていて止められなかったことを悔やんでいたと吐露した。
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