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 かける言葉がなかった。気付かれていることに気付かなかった。格好悪いなと思った。でも同時にほっとした。遥夏だけは自分のことを見てくれると安心した。  遥夏を見上げると、汚い色水でずぶ濡れの誉より頬を濡らしていた。夕日の赤が二人を染め上げていた。 「これからは、私があんたを守るから」  泣くだけ泣いて気が済んだのか、またいつものちょっと高慢で、気丈な遥夏の顔に戻った。 「…うん」  誉が頷くと、遥夏は力強く手を握りしめた。 「一人で解決できなくてごめんね」  そう言うと、また遥夏は泣きそうに顔を歪ませた。だけど歯を食いしばり、眩しそうに夕日に目を向ける。 「私、超有名になってやる。そんで酷いことしてきたやつら跪かせてやる」 「女王様みたい」 「そうよ。だから今日あったことは二人だけの秘密ね。お母さんにも内緒。女王の言うことは絶対だから。分かった?」 「うん。この服はさすがに言えないし、はるちゃんが泣いたことも内緒だね。鬼の目にも」 「だれが鬼だ」  言うが早いか誉は頭を打たれた。  先ほどのことなど嘘のようにまた日常が戻ってきた。    ***  結局、外で待ってると言った久住は誉の突然の涙に慌てて店に入り、誉を強制連行した。今は小一時間ほど前まで逃げ込もうとしていたコンビニの駐車場で、ぼんやりと立ち尽くしている。久住はただ誉の横に並んで車の流れを見ていた。     
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