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「いつから…姉ちゃんと知り合いだった?」
ぽつりと問いかけると、久住はややあってから誉の方を向いた。
「もしかして、初めから知ってた?」
「いや、それは違う」
答えてからはっとして、久住は黙り込んだ。今度は誉が車の流れを眺める。
車のヘッドライトの光は似ているようで違うんだな、と至極どうでもいいことに気付く。 似ているようで違うものはたくさんある。
同じ制服を着た誉と久住も、入れられた〝箱〟は同じでも育った環境も考え方も違う。
交わることのない人生が平行に並んでいるとばかり思っていたところへ、突然の接点ができた。人為的に繋がった接点だとしても、繋がってしまえば点を線にすることは雑作もないことだ。
点を線にし、その線を長く伸ばすことが重要な作業になる。
人は人と関わりながら生きて行くのだから。
しかし本当に、その作業をすることに意味があるのだろうか。どちらか一方が頑張って繋ぎ止めて、その先に何が見えるのだろう。
酷いことをされても、久住の意思で側に居てくれたのではなくても──、好きでいることは、意味のあることなのだろうか。
「おまえの姉さんだって知らなかった」
久住は諦めたように吐き出すと、誉に向き直る。
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