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「あの雨の日、バイトしてたら血相変えて常連客が入ってきて、裏で高校生の男の子が絡まれてるから見てくれって言われた」
「常連客…?」
「ああ、それがおまえの姉さんだって知ったのはさっきだけど」
「…?」
話が読めなくて首を傾げる。
誉のことを気にかけるようにと、遥夏が裏で久住に頼んでいたのだと思っていた。なのにさっき知ったとは益々どういうことか分からない。
「元々、おまえの姉さんはうちの店の常連客だったんだ。名前も知らない、たまにバイトする日に会って挨拶する程度だったし」
久住はゆっくり当時を思い出しながら喋る。
「それがあの日、いきなり声かけてきたと思ったら、絡まれてる奴がいるから見てくれって。渋々了承したら、早く行けって捲し立てるし」
「それは、うん。申し訳ない…」
「まあ、結果としておまえが無事で良かったんだけど。後日バイトの日に…絡まれてた子はどうなったって根掘り葉掘り聞かれて、それが面倒だった。かいつまんで話したけど、自分の聞きたいこと聞いたら満足したみたいで、その後はまた普通の常連客に戻ったんだけど…」
身内の暴挙を聞いて、恥ずかしさで埋まりたい。重ね重ね申し訳ないと、心の中で久住に謝った。
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