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 隣を見上げ、誉は自分の頬が紅潮していくのが分かる。久住も誉と目を見合わせ、そして目を伏せた。 「なんか色々誤解してると思うから言うけど、俺は誰かに言われて、おまえと居たわけじゃねーから」  こんなこと言う資格もないけど、と続け、自嘲気味に吐き出した。  久住の握りしめている掌が少し震えているのは寒さのせいだろうか。それとも何かに耐えているのだろうか。  なんでもいい、と思った。  衝動的に誉はその手を取り、両手で包む。ただあたためてあげたい、安心させてあげたい、その一心だった。 「うん、分かったよ」  久住は驚きで目を瞬き、包まれた掌を面映そうに見つめた。
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