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「そんなことは聞いてない。あんたが、あんたに何かあったら、私は」 「大丈夫だよ」 「何が大丈夫なのよ!」  いきなり怒鳴ると、ベッドにあった枕で力一杯打たれる。 「顔面!」  抗議の声を上げたが、余計に遥夏はヒートアップして最終的には馬乗りになって打たれた。お互い攻防をし尽くして、遥夏は唐突に枕を投げて立ち上がり、ベッドでふて寝し始めた。 「姉ちゃん…」 「うるさい」  誉は小さく息を吐いた。  同じ親から血をわけた姉弟なのに、同じようにお互いのことを思っているはずなのに、いつからこんなにお互いのことが分からなくなったのだろう。それとも分かっているふりでやり過ごしていたのか。 「そんなに俺が頼りない?」 「…もう出てって」  本当に勝手だなと思う。今も昔も遥夏は女王様だ。だけど、我が侭でも勝手でも、姉弟だ。分かりたいと思う。そしてこんなこと、もう止めさせなければいけない。 「姉ちゃんが背負うものは、もうないよ」  遥夏の背中に静かに語りかける。大きいと思っていた遥夏は、今は誉と変わらない。 「いじめられてた俺は、姉ちゃんと約束したあの日に消えたから」  どんなことがあっても気丈に前を向いて、進もうとする姿は格好良かった。あんな風になれたらと、密かに憧れていた。     
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