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 先日、特別室終了テストを受けた。結果は期限最終日の今日、言い渡される。無事三人とも基準点に達していたら、すぐさま本来のクラスに戻ることになっている。  長いようで短かったな、と誉が感慨に耽っていると後ろから体当たりを喰らう。 「ぅわっ!」  思わず声を上げ、転びそうになる体を踏ん張りストップをかける。が、慣性の法則には逆らえずつんのめるように前方に傾いだ。 「…っぶねえ!」  一瞬既視感かと思うほど以前と同じようなことが起こり我が目を疑ったが、間一髪で後ろから抱えるように助けられた。 「あ、りがとう…」  詰まり気味に礼を述べ、振り返ればげんなりした顔の久住が見下ろしていた。地面に降ろすと誉の身だしなみを整え、怪我はないかと確認された。いくらなんでも公衆の面前でやりすぎだろう。母親か。 (恥ずかしいんですけど…)  とは言えず、誉は頬を染め視線を逸らす。 「朝から公共の場でいちゃいちゃするの、やめてくれますぅ」  加藤はわざとシナをつけてからかう。どうやら体当たりの犯人は加藤のようだ。小学生かと呆れる。 「おまえが原因だろうが」 「ははははは」 「自分のウェイト考えろ」 「ひとをデブみたいに! ひどい!」 「聞けよ」 「聞いてますー」     
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