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久住が加藤をじろりと睨んだが全く意に介していない。鋼の心臓の持ち主のようだ。それとも馬が合うのかもしれない。久住がこんなにフラットに話しているのを見たことがない。心なしか楽しそうだ。
「そうだ峰石。剣道部入って鍛えたらいいじゃん。少しは逞しくなるぞー」
加藤は誉の肩に腕を回し、まずは見学に来いよと入部の算段をしながら、久住を置いて学校へと歩き出す。
「ちょ、ちょっと加藤」
「なにー。久住が焼くって?」
「!?」
「はぁー。兄ちゃんは心配だよ。あんな男に引っ掛かって」
「あんな男って誰のことだよ」
言うなり、加藤を誉から無理矢理はがす。誉は体を震わせ、全身赤く染まっていく感覚を味わった。そんな誉をまじまじと二人は見入る。
「なに、図星だった? まじなの? このヤンキー崩れを?」
「おまえふざけんなよ。俺はヤンキーでもヤンキー崩れでもねえ」
「はあ?! おまえこそふざけんな。どっからどう見てもそうだろうが」
「知らねえよ。とりあえず、デリカシー無い奴はどっか行ってくれますー?」
久住は加藤の口調を真似てしっしと追い払う。ぐっと悔しそうに押し黙った加藤だったが、
「せいぜい残り少ない同クラ生活楽しむんだな!」
捨て台詞を吐いて先に学校へ行ってしまった。
「なんだあいつ。仲間外れに拗ねたのか。メンタル弱ぇな」
「いや、ちがうから」
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