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「どんだけだよ」
「まあ、確かに」
誉は苦笑いしながら答えると、校門が見えてきた。途端、少し焦る。
今日は特別室には行かない。直接職員室の塚本のところで採点結果と今後の訓示を聞くことになっている。全員基準点を超えていたらそこで解散し、各々のクラスに戻るのだ。
この先のことを考えるとどんどん焦りが増す。
特別室を離れてしまったら誉と久住は接点がない。このままでは繋がりが自然消滅するのは時間の問題だ。やはり恥を忍んで雑誌を口実にしても、繋がりを断たないようにしようとかと考え直す。
あの夜感じた久住の想いがまだ生きているなら、ここで手放したくない。
緊張と不安と焦りとで吐きそうだが、久住を見上げる。
「あのさ、久住。これからも…こうやって話せる?」
「…は?」
勇気を出して誉の精一杯の気持ちを伝えると、何言ってんだこいつ、と訝しむ顔で久住に見られる。
なけなしの勇気がガラガラと崩れ、誉の心にブリザードが吹き抜けた。
(もしかして俺の独り相撲だった…?)
あの夜、確に久住から気持ちを伝えられたわけではない。だけど、お互いの気持ちを共有した気がする。
(気がした…だけだったのか…)
「おまえ、俺のことなんだと思ってんだ」
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