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久住の靴の下敷きになった眼鏡を誉は呆然と見つめる。
「やっぱこれ、良い感触じゃねーわ」
「当たり前だろ!」
眉間に皺を寄せながら変な感想を述べる久住にすかさず突っ込んだ。
「じゃあこの眼鏡どうするつもりだったよ? フレームはいいやつみたいだけどレンズに度は入ってねーし。後生大事に残しておくつもりか?」
「それは…分かんないけど、もう必要ないって決めたから」
「だったら眼鏡なんか捨てろよ。どうしても必要な時が来たら、俺が何とかしてやるから」
何とかするとはどうやってするんだとか、必要なときが何年も先でもその約束は有効なのかとか、そもそもこの眼鏡の意味を分かっているのかとか、色々気になることはあるけれど、久住の言葉を真に受けてみようと思う。
先のことは誰にも分からない。ずっと今と変わらない関係かもしれないし、別々の道を歩んで縁が途切れるかもしれない。仲違いだってするかもしれない。
でも今なら、久住のことを信じて真に受けて、踊らされて、失敗や後悔をしても大丈夫だと思える。
それらすべてが峰石誉になっていくのだ。
悲しい過去もまだ見ぬ未来も、引っ括めて連れて行こう。その体験が〝あった〟という記憶だけ残して。
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