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「…とりあえず、道端に残骸置いたままにはできないし、片付けよっか」
誉がしゃがみ込んで割れたレンズと拉げて歪な形になった眼鏡フレームをケースに仕舞うと、久住も細かな欠片を一緒に拾い集めだした。儀式のように粛々と片付けながら、ふと問いかける。
「…リベンジはもう終わり?」
あらかた拾い終わったのを確認して、二人して手を払い立ち上がる。ちらりと窺うように久住を見上げると、小さく口の片端だけ上げた。
「手始めに、うちの店のビーフシチュー食わせてやる」
「ホントに? やった!」
「気に入ってたみたいだしな」
「うん。好きなんだ」
「そりゃよかった」
久住は見たこともないくらい穏やかな表情で微笑むと、誉の頭を優しく撫でた。それだけで全身が満たされたように温かくなる。
(好きだな)
ただそう思った。
「好きだよ」
次の瞬間にはするりと口に出ていた。気負いも何もなく、唐突に気持ちを言葉にしていた。
久住は目を瞬かせ驚いている。
「俺も久住が好きなんだ」
じっと見つめ、だめ押しのように溢れる気持ちのまま告げると、久住は葛藤しているのか眉間に皺を寄せ唸りだした。
(あれっ? 失敗した?)
唐突すぎたかな、とじわじわ焦りだす。
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