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「そのままだよ。オーナーが必要ないって、入れなかったんだ」  御崎はやれやれとでも言わんばかりの顔をしている。確かに経営のいろはも知らない誉でも面喰らう話だ。  一般的な飲食店では建物に看板やネームプレート、食器や箸袋といった雑貨類に店名を記している。少なくとも誉が入ったことのある店ではそれが当たり前だった。だから疑問が残る。 「それだと…お客さんは何を目印にお店に来るんですか? 俺が前に店に来たときも、店の前を通りかかったときも、結構お客さん入ってましたよ」 「うん。そこはまあ、一応広告とかも出してるし、タウン誌の取材も何度か来たみたいだしね。それに、看板とかはないけど、ライトアップされたら浮き出てくる仕様にはなってるから」 「浮き出る…?」  先ほどから疑問ばかりを呈しているが、御崎は謎がさらに謎を呼ぶ話法で、あえて要点を少しずらしているように思える。 「あ、シチューできたみたいだ。啓太がすごい顔してこっち来る」     
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