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 御崎は誉の後ろを目で示して、後半声を落とし笑いをかみ殺している。気になって振り返ろうとすると、ちょうど隣に久住が着いた。見上げれば若干不機嫌な顔をしているが、料理をテーブルに出す動作は丁寧で美しい。感心しながら見ていたら、久住は御崎に向かってしっしと手で追い払う仕草をした。 「ひどいなー。啓太の友達なんて滅多に見られないんだから居てもいいだろ?」 「なんでだよ。いいわけねーだろ」 「〝お兄ちゃん〟としては弟の交友関係も把握しておかないと」  誉は二人のやり取りを眺めながら、カトラリーからそっとスプーンを取り出す。相変わらずビーフシチューから立ち上る湯気と匂いで食欲をそそられる。 「いつ兄貴になったんだよ。そもそも兄弟の交友関係なんかいちいち把握しねーだろ」 「あー、またそうやって一人っ子の俺に、兄弟の〝しきたり〟とか言うし」 「しきたりじゃねえ、一般論だ」 「ええ? 誉くんは俺が居たら迷惑?」  いただきますのタイミングを計りかねていたところへ、急に話が振られる。テンポよく交わされる会話は見ていて気持ち良いし面白いので迷惑ではない、そう答えようと口を開きかけたら、久住に手で遮られた。 「冷めるから早く食え。凛、食事の邪魔するな。休憩するなら更衣室行け」 「あ、ごめん…気が利かなくて。でも、啓太が店に初めて連れてきた友達だし、たくさん話してみたかったんだ」     
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