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御崎は申し訳なさそうに眉を下げ、笑顔の時より二割減ほどのきらめき具合で言い添えた。王子様のような高嶺の花レベルの容姿をしている彼が、気を落としていると同情心を煽る。
「別にいいですよ。俺も久住と仲がいい人が居たら気になるし。やっぱりどんな人間か気になりますよね」
スプーンを握りしめたまま相槌を打つと、御崎は誉の手のひらごと両手で包み込んで「だよね」と目を輝かせた。喜びがにじみ出て、きらめき度が通常に戻っている表情を見せられ、誉は狼狽え視線を彷徨わせる。女性ならば一瞬で恋に落ちていただろう。
(イケメンの破壊力恐るべし…)
そんなことを思っていたのが顔に出ていたのか声に漏れていたのか、久住は強引に誉の手から御崎を引き剥がすと、調理場に向けて声を上げた。
「親父! 凛が仕込み手伝いたいって!」
「そんなこと一言も言ってないから! 無理だから!」
焦った御崎は慌てて椅子をガタガタ鳴らしながら立ち上がり 、久住の父に言い募った。調理場ではどっと笑いが起こる。
御崎は去り際に久住を押しどけ「今度、啓太がいないときにおいで」と誉に囁くと、涼しい顔をして調理場へ向かった。
「本物の兄弟みたいだね」
しみじみと思うまま述べれば、誉の向かいに腰を下ろそうとしていた久住が顔をしかめた。
「悪夢だな」
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