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「美味しかったです。ごちそうさまでした」
店内が客で混み合う前に誉は席を立ち、調理場の久住の父に頭を下げた。
「どういたしまして。誉くん、またおいでね」
「はい。次からはちゃんとお金払いますので…」
「ああ、別にそんなこと気にしなくていいから。啓太にこんな可愛らしい…って言うと失礼か。ちゃんと友達がいるってことに、おじさんは嬉しいよ」
久住の父は目尻にシワをため、喜びを顔に滲ませていた。いつか久住もこんな風に笑うのだろうか、とまだ見ぬ未来を想像する。あまり見たこのないレアな表情だが、親子なのでやはり似ている。未来の久住がここにいるようでどうにも落ち着かない。
「俺、こいつ送ってくから。あとよろしく」
店のロングエプロンを外しながらこちらへやって来た久住は、久住父に了承の返事をもらい誉を外へ促す。
「え? いいよ! 大丈夫だから。一人で帰るって」
バイトを中断して送ろうとする久住に驚いて突っ撥ねるが、力では敵わず、店の外へ押し出された。途端に久住はこれ見よがしにため息を吐く。
「また変なのに絡まれるぞ」
「か、絡まれないし…」
「だめだ。親父だってお前のこと可愛いとか言ってたから危ねえだろ」
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