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「どーいう理屈?!」 「とにかく送る。決まり」 「えー……、あ」  勝手に決めてしまった久住に呆れつつ、ふと先ほど凛が話していたことを思い出す。 「そういえば看板って、どこに──」 「ああ、これのことか?」  そう言って久住が指差したのは、誉のすぐ後ろの店の外壁だった。 「あっ…!」  振り返り、誉は驚いて声を上げる。久住の指差す外壁には影絵のように店名が映し出されていた。どこから映しているのか辺りを見回せば、店の軒下にプロジェクターが取り付けられており、「dining bar K」の文字がそこから壁に照射されていた。言われなければ、壁と一体化しているのでうっかり見過ごしてしまいそうだ。  こんな仕組みになっていたのか、と誉はプロジェクターと映し出された店名を交互に観察する。 「お前がいつも通りかかる時間帯に、プロジェクターの電源入れてないからな。今日は凛が点けたみたいだけど、普段は点いてるの二十時くらいからだし、知らなくても無理ねーよ」 「そうなんだ…」  何てことないように説明され、頷きかけた誉ははたと気付く。聞き間違いでなければ今、久住は誉が店の前を通りかかる時間帯を把握してるようなことを言った。     
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