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「じゃ、じゃあ、久住は、俺がどんなモデルをしてるか、し、し、知って」 「ああ」  久住が首肯すると同時に、誉は地面に埋まる勢いで蹲った。顔から火を吹きそうなほどの羞恥心に悶え、頭を抱える。久住にひた隠しにしてきた女装モデルのことを、あろうことか隠したい久住本人に全てバレていたというのだ。滑稽すぎて涙が出そうになる。  顔を上げられず蹲ったままの誉に寄り添うように、久住は通行の邪魔にならない位置へ移動しながら屈んだ。 「何か事情があるんだろうな、ぐらいしか分かんねえけど、俺しか知らないと思ったら、優越感があって黙ってた。…ごめんな」  久住は謝り、誉の頭を何度も優しく撫でる。しばらく撫でられているうちに恥ずかしさも落ち着き、顔を上げれば久住と目があった。誉の顔はまだほんのり赤味が残っているのが分かるほど熱を持っている。久住はそれを目にして揶揄うでもなく誉の頬に手を添えた。 「初めは、店の前を通るから目に入ってただけだった。それがいつからか通るのを待つようになって、気がつけば、側にいたいって思うようになった」  往来で二人しゃがみ込み、行き交う人たちは皆一様に視線を投げかける。     
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