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 迷惑にならないうちに移動しなければと思う反面、久住の想いを聞けた喜びをじっくりと堪能したかった。  人の目がなければもっと触れて欲しいし、触れたかった。  こんなに近くにいるのに、恋しい、ただそう思った。  自然に湧き出る気持ちがあふれてしまいそうで、すがるように久住を見つめる。 「バカ、そんな目で見るな」 「ごめん…」  咎められたと思い、反射的に謝ると苦笑いされた。 「ここじゃ、手も繋げないだろ」  通り過ぎるカップルの絡んだ指先が目に入る。誉にはそれが優越感に浸っているように見えた。  人を好きになる。  それはとてもシンプルなものなのに、同性というだけで色々なものに縛られる。  同性と異性で好きに違いがあるのだろうか。同性でも異性でも、人と関われば悩んだり迷ったり傷付いたりする。それらをたくさん経験しなければ、当たり前にできることも同性では許されないのだろうか。 「もどかしいけど、俺はお前以外とは繋ぎたくないよ」 「そんなの俺だって…っ」  誉が久住のシャツを掴んで言いつのれば、久住は一つ大きく息を吐いて立ち上がる。シャツを掴んでいた誉の手を取って、ぐいっと引っ張り上げると感情を抑えて囁いた。 「俺の部屋、来るか?」
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